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2021年02月18日

ホモソーシャルと責任感の着ぐるみ_花束みたいな恋をした

ホモソーシャルと責任感の着ぐるみ_花束みたいな恋をした

男女が出会って恋をして、すれ違うお話は
歌でも本でも映画でも何度となく語られてきました。
『「いちご白書」をもう一度』もそうですね。

この作品も基本はそういう話だけど、
2人の感情の変化や心の機微を
会話とモノローグで言語化することで
「何故すれ違うのか」という背景が
理路整然と提示されているところに
大きな衝撃を受けました。

麦(菅田将暉さん)が、
いろんな先輩との関わりのなかで
ホモソーシャルの構造に組み込まれていく様子が生々しい。

絹(有村架純さん)を大事に対等に扱う
文化系大学生だった麦が、
社会に出る過程のなかで
自分のなかに元々はなかったはずの
「男としての責任感」を、後天的に、
自ら身につけようとするのは何故なんだろう。

彼女と互いの親に会うから?
先輩が彼女をあんな風に扱うから?
会社の先輩の提案やスケジュールには
逆らえないから?

他でもない麦自身が、
自分からズブズブと着ぐるみに入って
誰より苦しんでいるように見えた。

好きで背負うわけじゃない「責任感」は
おそらく日本の社会や家父長制の中で
「そういうもの」とされた価値観でしょうね。

2010年代の若者でさえこの構造に組み込まれ
交際相手の新たな1歩に対しては
マウントを取ったあと、家にいることをせがむ。

この着ぐるみ、自分じゃ脱げないんだろうか。

これまで私のなかで答えが出なかった
家庭内モラハラの源流を見た気がしました。

決定的な亀裂も見事に言語化されていた。

経済的に潤沢だとしても、パートナーから
「働かなくていいよ」
と言われる筋合いはないよなあ。
パートナーからこうした言葉をかけられて
嬉しいケースも勿論あると思うけど
「何故彼がそう言うに至ったか」については
もう少し考えていきたいです。

はー、揺さぶられた。

…とここまで書くと怖い話のようですが
全くそんなことはないです。
基本は楽しい恋バナ。

2人の始まりにきゅんきゅんして
絹の両親(戸田恵子さん&岩松了さん)の
ザ・広告代理店勤務な雰囲気に笑った。

本やお笑い、映画にラジオ番組など
共通のカルチャーを介して2人は惹かれるのだけど
散りばめられている固有名詞を全く知らなくても、
何なら2人に共感しなくても、
話の本筋を追えるところが魅力でした。
「そんな理由でライブ諦めるの!?」とは
ツッコミました。

「東京ラブストーリー」「カルテット」を手がけた
坂元裕二さんの脚本による会話劇。

東京に暮らす大学生の恋愛の話で
もちろん地名もたくさん出てくるのだけど
「東京」そのものを描いているわけではなく
舞台をほかの街にしても成立しそうに思えるのは
今や地方に住んでも、カルチャーを受け取る際に
以前ほどのタイムラグがないからでしょうか。
そういえば10年前にはまだ
radikoのエリアフリーもありませんでしたね。


最近恋愛ものを観てない方こそ、ぜひどうぞ。



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Posted by 上野 紋 at 09:00 │観たもの聴いたもの